飯の時間だ
倒れている・・・
人が倒れていた。
手にはよく研ぎ澄まされたナイフを持ち、
液体の入った皿に頭と手を浸している状態でピクリともしない。
果実を飾り盛るにもってこいの少し底のある銀製の大皿に
8分目ぐらいまでソレはは注がれている。
かまわずその状態で俺は器の中身をゴクリと飲み干す。
一口にもならない程度の量だがコレだけでも十分だった。
ついでに頭と手もベロリと舐め回し、
最後に自分の口の周りも綺麗に舐めて終りにする。
喉をならし一息ついたところで、
離れた場所で一部始終を見ていた奴に呼びかけた。
「おい、バカ皇子。仕事しろ」
「バカ」と呼ばれ少し顔の筋肉を引きつらせたものの、
小走りで倒れている人物に駆け寄る。
「マギさま・・・っ」
呼びかけるがピクリともせずただ、静寂のみが帰ってきた。
すぐさま耳を胸元に近づけ心音を確かめるとひとまず安堵といった表情を浮かべてから手に持っていた毛布をマギの肩にかけ、腕を引き寄せてそのまま背負う。
その様子を退屈そうに欠伸をしながら眺めていると、
バカ皇子はコチラを見据えて言った
「・・・低俗の化け猫に卑下される覚えはないのですが?」
それに対し俺はニヤニヤと卑しい笑みを浮かべながら返す
「バカはバカとしかいいようがねぇだろ。
・・・ま、今回はそのバカのお陰で十分にありがたかったけどな。
また、お前ソイツに何かいったんだろ?」
「・・・・・・・・・」
図星だったらしく沈黙で帰ってきた。
かまわず続けて俺は捲し立てる
「あんまり、陰気なガキを苛めるなよ。
今日みたいにぶっ倒れるまでメチャクチャしやがるからな」
「心配するぐらいならさっさと居なくなったらどうですか?」
言葉は丁寧だったが明らかに突き放した物言いで睨み付けてきた。何度もコイツには似たような悪態をつれているのでお決まりの台詞を吐き捨てる。
「何をほざく、マギが望んだから俺がいるんだろ?」
そう薄笑いながら切り返すと、「チッ」と短く舌打ちしてバカ皇子はスッと立ち上がり反動であるじの身体を背負い正した。
そのままの体勢で足を一歩下げクルリと背を向けるとサカサカと歩を進め、出口の前に立つと再び向き直るやいなや
「死ねっ!化け猫め!」
と怒号をかまし何一つ無駄のない機敏な動きで扉をギィッと開け、すぐさま身を翻し力任せにバタンっと閉めて姿を消した。
また耳をつく無音だけが俺を包み込む。
「・・・残念ながらお前がそうしてる間は生きてるだろよ・・・」
そう呟くと一つ大きな欠伸をしてから瞳を閉じ暗闇の中に戻ることにした。
- 2007/01/01 (月) 00:00
- 閑話 その1