商談
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・言葉がでてこない
オレは目を疑った・・・
目の前にいるのは人ならば10になるかならないくらいのヒョロヒョロの人のガキが一匹・・・
確かにこのガキからただならぬ魔力をプンプン感じるのだか・・・
一応、用心に越したことなく姿勢を低く唸りをあげる。
「今日は君に用があって来たんです。
うーんとね。ちょっと前に父様が死んじゃってね。
ボクが王様になることになったの。」
それにかまわずガキは短い手足をバタバタ動かしながら倒木をまたいで近づいてきた。
第一声に続く緊張感のない間抜けな響きに力が抜けた。生まれて初めて眩暈というものを知る。
「嘘だ・・・こんなガキが・・・世も末だな・・・」
「あー、あー、馬鹿にしてますねっ。猫さんっ。
父は90歳の大往生だったんです。
ボクこう見えても年だけはとってますっ!」
ドコが・・・見た目だけじゃなく中身もガキが・・・
ああ、だから”年だけ”なのか・・・
「・・・あーわかった。用があるんなら言ってみ」
喰ってやるつもりだったが少しこの馬鹿に興味がわいたので相手にしてやることにする。
時間ならいくらでもある。オレは退屈だった。
それに相手の力量がみえない以上は迂闊に手を出せば逆に喰われかねない。
こんなことは全く初めてだった。
何故、オレがコイツを恐れいている・・・?はっ・・・馬鹿な・・・
押し黙るオレを前にガキは恥ずかしそうに後ろに手を回しモジモジしていた。
くそっ!何だっ!何か後ろにもってんのかっ!
「早く!言えっ。喰うぞっ」
苛立ったオレの脅しにガキは一瞬目を丸くしてすぐにニヘラと笑い切り出す。
「あのですね。でっかい猫さんはココの守り神さんですよね。」
「そうも言われてる。・・・が・・・人を食ってるぞ」
「聞けば魔力を喰らって生きながらえているそうで・・・」
「・・・まぁ、そういうことになるな・・・」
「そこでご相談なのですがココから引っ越ししませんか。
ボクのお城にっ!もの凄い広いお部屋を用意しますんで。」
「・・・・・・・・・なして?」
オレとしたことが馬鹿ガキの突然の提案に我を失ってしまった。
「ボク一人では城を任されるのが不安なんです。」
いや、不安なのはお前ひとりではないと思うぞ・・・
「あなたのようなでっかい猫さんがいれば治安的に大助かりなんです。」
「いや、超危険因子だと思うのだが・・・」
人に忌み嫌われる存在であるのに「大助かり」とは・・・。何のつもりだ
「ボクの身体に興味ありませんか。超重量級の魔力とか」
「・・・そうだな・・・お前は何者だ・・・?」
いままで能天気そうにへらへらしていた馬鹿ガキの顔つきが曇る。
「実はルーって名前があるのですが、ボク自身はマギと名乗ってます。」
「・・・・マギ・・・・・・マギ・・・。っ!はっ、お前が魔儀をやったのかっ!どうりでっ」
静かな森にオレの馬鹿でかい笑い声が響き渡った。
騒がしい妖精どもの噂に聞いたことがある。
魔儀・・・千人の生き血を浴びることで不老不死になれるという。
魔力が馬鹿ほどあるのも納得がいく。
「さすがは神さま、話が早い。正確には”出来損ない”なのですがね。寿命的に超長いんです。」
「まぁ、いいや。オレが興味あるのはそんなことでねぇ。それでてめぇはどうするんだ。」
ゴクリ・・・溜まり溜まった生唾を大きく飲み込む。
”オレに会いに来て””城に住め”・・・次にコイツが何を見返りに何を言うのか解かる。
「ボクの身体を食べさしてあげます。全部は駄目ですけど」
ニカッ
瞬間オレは喜びに満たされる。
かつて無いほど顔にシワを寄せて喜んだ。滑稽すぎて思わず奇妙な笑いをもらす
これだけの魔力があるやつなら血だけでも十分だ。
しかも相手はマギで人間だ。一生喰うには困らなねぇし飽きたら全部喰えばいい。
「”いいですか・・・”」
眉間に眉をよせて不安そうにじっと見つめてきた。
「・・・いいぜぇ。最高級のベットを用意してくれ」
「はいっ絶対にっ」
満面の笑みに変った。
冗談を言ってみたつもりだが大真面目に受け取ったらしい・・・
「・・・ちょっと味見させてくれや。」
「えっ。今ですか?うぇ~少しだけですよ。痛いの苦手ですし」
「マギが何言ってやがる。」
後ろ手に持っていた短剣で馬鹿ガキは自分の手を切り血を飲ませてくれた。
さして脅威でない短剣で何するつもりだったかしるよしもないが思ったとおりの極上の美味さだった。
後日、城に入ったオレの部屋には馬鹿でかく超フリルのついた豪華なベットが用意されていた。
※暴力表現あります。
- 2007/11/08 (木) 23:52
- マギを食べる猫