マギの話

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秋の空

さて、ココは皇国から少し離れたとある村。

金色の稲穂の海が辺り一面に広がる畑。
育ちすぎない内に稲を取り入れるべく大人から子供まで皆大忙しである。
今年も例年どおり大豊作で村は活気に彩られていた。
例年と違うといえばマギとジーナの存在だったがそう大きな影響はなく平和な日々が続いていた


「 うーん、ココに来てから早2ヶ月かぁ。そろそろあの本の続きが気になってきたかな。
前の国王は4ヶ月かかってたっけ?
最長記録は半年だったかな~。あの時はでっかい子猫ちゃんが暴れたりしないか心配だったけど。どっこいせ」
ヒョロヒョロの人影はブツブツいいながら刈り入れた稲穂の束を持ち上げた。

「 マギ~、そろそろ休憩しよ~」
村の娘がお茶をもって声をかける。
「 は~い。今いくよ~。」
呼ばれ親しげに応答する。といっても誰に対してもこうなのだが。

一緒に休憩に入った数人とお茶を取り囲む

「 お前いきなりフラリとやってきて“ココに置いてくれ”って言って来たときにはビックリしたけど慣れてみると普通なもんだな~。」
抜きん出て身体の大きな男がマギに言った。
彼はルイス。この村一番の腕っぷしで村の守り人としても役立っている。
実際に皇都でも彼の名を知るものは少なくはない。
見てくれは知らないが彼の武勇伝なるものは多くの物が知っていた。
ドラゴンの鱗を持ち帰った・・・2mを超える巨大魚を釣り上げた等々・・・
・・・と華々しい噂が皇都を駆け巡ったのも数年以上前で今では一村人として腰を落ち着かせている。


「 まぁ、お迎えがくればお別れになっちゃうけど。イツ来るか解からないし。それまでお世話になります。」
マギがズビズビと茶をすする。
「 ご家族は行商で隣の国に行くんで安全のために知り合いに村長がいるから尋ねなさいっていわれたんでしょ?若いのに大変よね。」
コポコポとお茶を注ぎながら娘がいう。

マギは皇族関係だということは黙ってこの村に厄介になっている。
もちろんこの村には本当にふらりとやってきて普通に暮らしていた。
実は村長とは全く関係が無いのだが、ココの村長は少々ボケ気味で押し切られると「ハテ?そういえばそうじゃったけ」という気になる人だった。



「 でもねー。この辺も物騒なのよ。この時期になるとロジャスが来て暴れてくし。ね、ルイス」
物騒な話なのにまったりお茶を飲みながら娘はルイスに応答を求めた。
「 まぁな。村中で追い払うんだが。最近は数も増えてくるし今年はどうなるんだか・・・」
ルイスは眉間にシワをよせながら心配そうにした。
「 ロジャス?聞いたこと無いけど。何か新種の生物?」
マギがキョトンとして質問する。
「 あはは、ロジャスは盗賊団よ。まぁ今年もルイスがいるから何とかなるんじゃない?」
「 ふーん、世の中には悪い奴もいるってことだね。まぁ安心して!ボクもいるから。」
ふんむっとマギが胸を張った。
それを聞いた回りの連中は一瞬我を忘れたがすぐに押し寄せる笑いに腹を抱えた。


「 ふぁははははっ!マっマギ。それ本気でいってんのかっ?」
ルイスが目に涙を貯めながら苦しそうに言った。
「 へ?ボクはいつでも本気だけど?」
マギは素の顔でそれに受け答えた。
一同は地面に顔を押し付けた格好で腹を抱えて小刻みにプルプルと震えている。
よほど笑壷にはまったらしく声も出せないほどに笑っているのだ。
「 マギ・・・っ!あんたみたいなヒョロヒョロなのがどうやって・・・超期待してるわね。ぷぷー」
「 ふぁっふぁっふぁっ!こんな子供は初めてだ!邪魔にならない程度に頑張るんだぞ」
一時復帰したかと思うと口々にマギをからかっている。

村人A~Dがヒィヒィとマギを残して腹を抱えているとルイスが何かに気付いた。
「 !お~い、ジーナっ!ココに来て休憩しねーのか」
やたら大きな声でルイスが穂を積んでいる女性に声をかける。
となりで聞いていると鼓膜が破れそうな大きな声だった。
ジーナと呼ばれた女性は「ええ、そうね・・・」というとそそくさと隠れてしまった。


「 ・・・まただ・・・。俺ジーナに嫌われてるのかな・・・」
ルイスはガクリと肩を落としてチビチビとお茶を飲んでいた。
「 なんでだろうね。ジーナさんボクとはいたって普通に話してくれるのにねぇ。」
「 私もよ~。ジーナとても良い人よ。美人だし~。」
「 ジーナはココに来てまだ一ヶ月だし。ルイスのこといつか解かってくれるさ。まだ怖いんじゃないのか?」
「 うぅ・・・そうだと良いんだが・・・」
ルイスがジメジメと背中を丸める。
 
「 ふぅ・・・こんなもんかな」
多少狂って積み上げられた稲穂の山にさらに稲穂を積み上げながらジーナは一息ついた。
「 ジーナさん・・・」
ヒョッコリと稲穂の山からマギが顔をだす。
「 あわわっ!」
ジーナはグラっと稲穂の山が崩れそうになったのを慌てて手で押さえた。
「 まっマギ!どうしたの?今ちょっと手がはなせないの・・・」
ブルブルと手が震えている。相当つらそうだ。
マギは崩れそうな稲穂を寄せながら言った。
「 ジーナさん。ルイスさんのこと避けてるでしょ。何かあんの?」
ジーナはギクリとした。そう・・・村に来たのは”ルイスが目的”だった。
「 なっ何もないわっ!・・・ただちょっと怖いかもね・・・」
( 本当は違うけど・・・あたしルイスとは親しくなりたくない。親しくなっちゃ駄目・・・)
ジーナの顔が陰る。それにマギは「うんうん」と同意する
「 そうだね~、目線あわすとのけぞって首が痛くなるもんね~。
でもああ見えてルイスさん良い人だよ?今日さこの後、収穫祭でしょ。何かいいきっかけになるといいね。」
「 えっ、ええそうね。そうなると良いわね。」
( そっか今日だっけ・・・この後家に帰ったら荷物まとめておこう・・・)
「 じゃ、今日のお祭り楽しみだね。」
マギはそう言うと心配そうに見ていたルイスのもとに駆け寄って行く。

 
「 ふふふ、脈ありでっせ。ダンナ・・・」
「 ばっ、馬鹿!マギ!そういうのじゃないって・・・」
といって耳まで真っ赤にしてマギを叱り付ける。かと思うと目を伏せて呟く

「 ・・・ジーナ、皇都の暮らしに疲れたからココに来たっていうからさ・・・
何となく俺に似てると思ってな、その・・・話ができたらと思ってる・・・。」
といって少し涙目になり親指を絡ませてモジモジ・イジイジしていた。
そんなルイスを知ってか知らずかジーナは悲しそうに遠めに見つめていた。

城からこつぜんと姿を消したマギ。
そこに彼はいた。

  • 2007/11/09 (金) 00:01
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