未成年飲酒
「 え~、今年も例年を上回る収穫量で皆も大変でしたが、無事にこうして収穫祭を・・・」
村長の長ったらしい挨拶をBGMに祝宴のお祭りが開催された。
村の中央にある大きな焚き火があたりをオレンジ色に浮かび上がらせ、
周りを村人が囲み中央では音楽が奏でられ村の娘が歌と踊りを披露している。
皆が心から大豊作を祝って騒がしくしていた。
ジーナはそんな村人にお酒を配る係を任されていた。
「 はい、マギお酒は飲めるかしら?」
「 ありがと~、ジーナさん。
大丈夫っ。ボク酒豪だからっ
ほらほら、ルイスさんはあっちだかんね。」
「 こらっ!誰が特別なんてないわよっ!」
マギに一喝いれ、ジーナはふっとルイスを見る
ジーナはするりとその場を離れるとその様子をマギは横目で認識する。
ドク・・・ン・・・
ちくりとジーナの胸が痛む。
( ・・・もう少し・・・)
ジーナは”標的”までカウントし始めた。
あと2人・・・1人・・・
順番に酒を渡しつつ、炎と踊りに見入っている人物まで確実に近づいていく・・・
「 こんにちは、ルイス。あなたもどう?大きめのを残しておいたから」
にっこりしながらジーナは特別製のコップをルイスに差し出した。
「 おお、ジーナか。ありが・・・」
ジーナから話しかけられたのは初めてで嬉しそうにルイスがお酒を取ろうと手を伸ばす
ジーナが目的を果たした安堵と虚無でいっぱいになった・・・そのとき・・・
「 ジィ~ナさ~ん。そのおっきいカップのボクにちょ~だい~」
後ろから抱きつき強引にジーナの手から酒が奪われる。
「 うぁ、マギお前すでに出来上がってるな~。いいよ、俺は小さいのでも」
がははとルイスが大声で笑う。
「 ちょっ・・・マギっ。まっ・・・」
予定が狂ったとジーナは声にならない声で静止しようとした。
空しくもマギはぐいぐいとジーナの特別製のお酒を飲み干す。
「 うははは、こりゃ駄目ら~」
カップを持ったまま、その場にバタリと真横になってたおれた。
「 おいおい、それだけ酒に弱いのにイッキ飲みするなよな。」
「 ぎゃ~ははは。2杯でそんなんか、弱いな~」
「 え~マギもう倒れちゃったの~」
すでに顔を真っ赤にした村の連中がマギを罵った。
だがマギは倒れたままピクリとも動かなかった。
「 あっあああぁ・・・何てことなの・・・」
周りの連中とは対照的に真っ青な顔をしたジーナはその場にへなりと座り込んでガタガタと震えている。
数分ほど馬鹿だ、駄目だと盛り上がった頃
「 しょうがない。マギを寝かしてくら~」
昏睡して眠るマギを膝に乗せて介抱していたルイスが気を聞かせて連れて行こうとしたとき
マギがガバリと起き上がった。
「 うぁ~。超効いたよ。明日二日酔い決定っ!どうせならもう一杯!ジーナさ~ん」
指をたてて言うマギにルイスが呆気にとられて目を丸くした。
「 マギ・・・お前・・・立ち直るの早すぎだろ・・・」
ルイスよりも目を丸くしたのがジーナであった。
目の前のありえないはずの現象に呆然とふらふらと後ろに移動する。
「 どうして・・・何で・・・」
( 調合は完璧だったはず・・・何故マギは・・・)
一人険しい顔をするジーナにマギがカップ片手にトテトテと近づく。
「 ・・・ねぇ、ジーナさん。もう一杯・・・」
「 っ!あぁ、マギ・・・ごめんね。はいどうぞ・・・」
慌てて平静を取り繕い水差しの中の酒をカップに注ごうとする。
マギはジーナの長い髪をクイッと引っ張って顔を近づけ小声で言った。
「 大丈夫、安心してジーナさん。ボクには毒は効かないから。でもちょっとクラっときたかな。何入れたの?」
ニヤリと悪戯っぽく笑う。・・・が、眼だけは笑っていない。
ゾクッと寒気を覚えたジーナはマギから飛びのいた。
その様子を見たマギは一つため息をつき肩をひょいと持ち上げ首をフルフル横に動かす。
「 ・・・ジーナさん。また後でお話しましょうね。」
マギがヒラヒラと手を振りながら離れていった。
出来上がった連中がそれを聞いて大声をあげてはやし立てる。
「 おぅおぅ、ジーナに告白でもするのか~」
「 え~その割には年離れすぎですよ。」
「 ふっ甘いですよ、皆さん。ボクは年の差だって越えて見せます。」
マギは誓いを立てるようにコブシを天に掲げ、冗談交じりにその輪へ入っていった。
ジーナはそこに一人取り残される
( ・・・なんで・・・こうなるかな・・・でも・・・ありがとう・・・かな・・・) マギを見ながらその存在に対して疑問を持ち始めていた・・・
収穫も終わり成果を祝う村人
- 2007/11/09 (金) 00:03
- 働くお母さん