星の瞬く頃
「 うわー、もう来たんだー。早いなー」
祭りも終わって夜も更け村が眠りについた頃、遠くの草原には軍なす明かりが2箇所。 高台に位置する村からはこの草原がよく見える。
少し視線を移動させれば 大きな荷物をかついだ黒い影がコソコソと村の入り口へ向かっている。
「 どこに行くの?ジーナさん。」
突然の呼びかけにジーナは手をバタバタさせて驚いた。
振り向き視線を落とすとニコニコしながら”今、一番会いたくないNO.1”が立っていた。
「 まままままマギっ!どうしてココに!?」
「 え~。星が綺麗なので見てたんです。ほら!あんなに輝いて綺麗だなー・・・流れ星に何お願いしよう!・・・っていうのは別談ですけど。
本当はジーナさんがドコかにお出かけするんじゃないかな~と思って・・・」
( こっこの子っ・・・あたしの・・・?)
何もかもお見通しのような発言に警戒しジーナは身構えた。
「 とっトニカクもっ。私今から村を出るわ。収穫も終わったしやる事はやったし・・・」
イツの間にか行く手を阻むかのように入り口の方向に立っていたマギの前をツカツカと足早に通り過ぎる。
「 ちょっと待ってよ、ジーナさん」
マギがジーナのロングスカートのスソを踏みつけると行き場を失った慣性とともに「ゴツリ」と鈍い嫌な音を立てて前のめりに地面に倒れこんだ。
「 ァ痛っ、なな何するのよっ!」
今ココに来て初めて人らしい反応を見せたジーナは四つん這ながらもパラパラと砂が舞い散る顔を上げる
それを見てマギは驚喜の表情を見せ回答になってない声をあげる。
「 うわっ。意外と丈夫なんだね。今のは絶対効いたと思うんだけど」
といい、ジーナの目線に合わせ隣にチョコリと鎮座した。 ジーナもその場で膝を抱えて腰を落ち着かせる。
「 ・・・アンタには負けるけどね。マギ」
罪悪感の欠片もない相手に鼻で笑いジーナが皮肉交じりの笑顔で返す。
そんなのも我が道には関係なし、ゴーイングマイウエイ、世界は僕を中心に回っているっ・・・とばかりにマギは突拍子もなく続ける
「 そうそう、どうしてルイスさんに毒を飲まそうとしたの。はっきり言ってボクじゃなかったら即死物だよ?」
今まさに一番触れて欲しくない、出来ることなら何も無かったかのようにこの場を立ち去りたかった原因にジーナの背中がビクリと動く。
答えように困る質問に口をモゴモゴと動かし、やがて観念したように大きくため息をつき肩を落とした。
「 ・・・飲んだら竜でも殺せるものよ。そういう風に作ったもの。・・・このまま素直に行かせてくれそうにもないし・・・あんたには聞きたいことあるし・・・」
ポツリ・・・ポツリと独り言のようにジーナは語りだす。
「 あたし8つになる娘がいるの。たまたまジルを連れて遠出して薬草をとりにきた時に・・・本当にたまたま・・・ね、ロジャスにその子が人質に捕られてね。こう言うの、
“お前の噂は聞いている。今度村を襲うときに一番、厄介なルイスを邪魔だから消して来い。そしたら娘は交換だ”ってさ。
・・・っ人から奪っておいて交換だってさ。馬っ鹿みたい・・・それでっ・・・あたしはっ・・・あたしが馬鹿だっ!」
ここに来て1ヶ月の溜まっていたものがあふれ出したのかジーナは唇を噛み締め手の腹を眼に押し当ててヒィヒィと啼いてしまった
一方マギはその様子をポクポクと考え込むように見つめやがて、答えが見つかったのかチーンと効果音を鳴らし明るく問いを投げかける
「 ・・・もしかしてジーナさんって”薬のジーナ”?魔法学校の最優秀卒業生の!
今では旦那の手伝い兼用で薬屋やってるけど、昔は薬で実験を繰り返し暴れまわってたという伝説の・・・」
嗚咽を交えつつも多少落ち着きを取り戻したジーナが顔を上げる
「 ・・・っ・・・っ・・・。あくまで誇張された噂だけど物知りなのね、マギは。 城下町では少しは名が知れてるけどこの辺だとさっぱりなのに・・・」
「 ええ、まぁそれなりに。で、ジーナさんはココを出て”今から”何しに行くつもりなの?」
”答えを求める質問”ではない”確認の質問”に「何もかもお見通しか・・・」とふっとジーナは笑い続ける。
「 あたし馬鹿だからさ。 昨日ルイスを殺すの失敗したのが知れたら娘が危ないわ。 失敗したのが知れる前に娘を助けにロジャスのホームにいくわ。 今は保障は無いもの。急がなくちゃ・・・」
が、ジーナはココを離れようとしなかった。まだコイツには聞くことがある。
「 へー。それはそれは・・・どうもご迷惑をお掛けしました。」
マギが少しも悪びれずに言う。おかげでルイスが昇天にせずにすんだのだが。
「 ・・・どうして私がルイスに毒を飲ませようとしたの解かったの。」
順序だて”軽めの質問”をジーナはする。
「 だーってジーナさん!ルイスさんのことこーんな眼して見てたんだから。」
といって下がりきった目じりをコレでもかと指で真上にあげてみせた。
「 もし何も無かったらどうしてたのよ」
意地悪そうに・・・どこしかしら安堵の表情をうかべ苦笑しながらジーナが返す。
「 まぁ、何も無いのが一番ですから~。それだけです。」
ヘラヘラと物言うマギを見つめ一呼吸ついてジーナが覚悟を決めて切り出した。
これは憶測であるが、確信である。
「 マギ・・・あんた魔儀(マギ)をやったんでしょ。むかし学校の図書館でみたことあるわ。
千人の生き血と引き換えに永遠の命と尽きることない魔力を得るって。」
真剣な顔で話すジーナとは対象にマギはあいかわらずの口調で返してみせる
「 ・・・あらまぁ本当に優等生さんだったんだねぇ。偽名使ったほうが良かったかな。
ふーむぅー。アレ系の書籍は全部処分したはずなんですけど・・・次は学校に潜入でもしてみようか。
・・・そう、そのマギだよ。出来損ないのね。」
ぶつくさというマギの声が台詞の後半に掛けて微かに沈んむ。
「 最初に名前を聞いたときから何かひかかっていたのよね。
アレを飲んで平気なはず無いもの。でも何でこんな子供が・・・」
「 はっはっはっ、これでも何百年も生きてマース。
ばれたら仕方ないけど内緒だよ?皆には秘密なんだから」
といって唇の前に人差し指をあててみせる
ジーナは「コイツのことだから何か事情でもだろう・・・」とそれ以上の話はしなかった
「 ふふふ、ばらしてやろうにもコレからどうなるか解からないんだから。
・・・さぁ、もう時間が無いわ。今からロジャスのホームに行くわ」
ザッとジーナが立ち上がる。と同時、マギがスカートの裾を引っ張る
「 待った!今日村から出てった人はいないからルイス暗殺の件はロジャスには知れてないと思うんだ。それに見たところ明日には来るみたいだし待っておいたら?ホームとやらは行っても無駄だと思うけど」
「 ・・・?何でそんなことが解かるのよ」
ジーナは不思議そうに言った。
マギは草原に浮かぶ群れ灯りを指差し説明しだす。
「 ほら、アレの行儀悪そうな塊の明かりがロジャスでー、
アッチの妙に真面目そうに並ぶ明かりはボクのお迎えさん。
どっちもあれくらいの距離なら明日の昼には村につく位だね。」
「 そうそうロジャスが生真面目に来るものかしら?」
「 真面目というよりはせっかちかなー。
ボクの知りあいにそういうのいるからね。
今頃、明日の成功の祝酒でも飲んで酔っ払ってるんじゃない?」
マギのあいまいな統計学によっての予測はジーナには理解不能である。
「 で、でも明日来てルイスが生きてることを知ったら娘がどうなるか・・・」
「 だったらルイスさんを・・・」
「 ・・・そんなことしたらルイスに・・・」
耳打ちするマギと眼を丸くするジーナがごにょごにょボソボソと何やらルイスについての作戦を立て始めた。
その後は一晩中ルイスの大きなくしゃみをが”なぜか”木霊していた・・・
祭りも終わりみなが寝静まる中、二人の影
- 2007/11/09 (金) 00:05
- 働くお母さん