エネミー
「ロジャスだっ!ロジャスが来たぞっ!!」
昼食もすみ村にのどかな空気が流れた午後、村人の青年が慌てた様子で叫びながら村の中央に駆けて来た。
「 村長っ!どうしますっ?」
「 むぅ・・・男は武器をもって村の入り口にっ、女と子供は家の中で待機しとれ!おいっルイスをココに呼んでくれっ」
ここが張り切りどころと云わんばかりにギラリと村長の目が光る。
「 そ、それが村長・・・ルイスのやつ朝から見当たらないんでっさ」
「 何じゃとーーーーっ!ルイス無しでどうやってロジャスを追い払うことが出来るじゃ」
もうおしまいだと云わんばかりに村長がその場にへたり込む。
その間にも村の入り口ではピリピリと火花を走らせていた。
柄の悪そうな集団が村の入り口前で村人と対峙していた。
ニヤニヤと大きな身体の男が口を開いた。
「 さぁさぁ、今年こそ超哀れな俺達に恵んでもらいましょうか?」
「 このロジャスの阿呆どもがっ、今年も返り討ちにあわせてやるっ!」
目が血走った村人が叫んだ。
「 ちょっ・・・ゴメンなさい。」
村人を掻き分けてジーナが前にでた。
「 おいっ、ジーナ!お前は中に入ってろっ」
村人の制止も聞こえてないかのようにジーナは叫んだ。
「 ジルを返してっ」
「 ふんふんふん、おや?」
ロジャスが村人を品定めをするかのように一見する。
「 親ビーンっ!ルイスの奴がいませんぜっ」
頭の悪そうな男に手を攫まれヒックヒックと嗚咽を漏らしながら泣いている女の子がいた。
「 おぅ、ヤッてくれたみたいだ、ジルを放してやれ」
ドンっと背中を押されたジルがヨロヨロと前に出て小走りにジーナの元に駆け寄った。
「 ジル・・・」
「 おかあさん・・・」
ジーナはジルをぎゅっと抱きしめた。ジルは答えるようにジーナの服をつかんだ。
「 おージーナ、超約束だったよな。俺様って超約束は超守るタイプなんだ。
えー・・・このように超義理堅く超博愛主義な俺様も我慢にも限度ってもんがある。
さっさと出すもの出さないと血を見るぞっ」
ダレ切ったロジャスの顔が険しくなる
と同時に村人がざわざわとどよめき始めた。
「 ジーナ・・・ロジャスと面識があるのか・・・?」
「 ・・・1ヶ月前に来たばかりだよな・・・」
ジーナは黙ってぎゅっと唇を噛み締めた。
ロジャスが思い出したように言い出す。
「 ああ、そうか実はなー」
「 や・・・め・・・て・・・」
ジーナが押し絞るように出した声にも全く聞く耳を持たないかのようにロジャスは続けた。
「 ルイスが死んだのは俺がジーナに”祭りの夜に殺して来い”って言ったからな。」
「 なっ!」
「 ルイスが・・・死んだ・・・祭りの夜に・・・?」
「 じゃあ、朝みたルイスは何なんだ?」
ロジャスの言葉に村人が驚きを隠せない様子でざわめいた
話のつじつまが合わないことでひどく混乱していた。
今度はその様子を見ていたロジャスが首を傾げながら子分に話しかける
「 なぁ、何か様子が変じゃないか・・・」
「 ~~~ん、そっすねぇ・・・でもルイスが居ないのは事実ですし、ヤルなら今ですぜ。」
「・・・という訳で時間切れだ。今年こそ無事じゃすませねぇっ!野郎ドモ!やれっ」
ロジャスが一括すると彼の子分達はドッと駆け出す。
と、そのとき
「 ちょっと待ってっ!!」
少し高い位置からよく通る声がその場に響きわたった。
ロジャスたちは反射的に駆け出した身体の動きを止め声の主に目を向ける。
昼下がりの招からざる来訪者
- 2007/11/09 (金) 00:08
- 働くお母さん