でんっ!!
「 あーっ!!見つけましたよっ!マギさま!」
先ほどの気の弱そうな少年はドコえやら、まるで宝物を見つけたかのように目を丸くして叫んだ。
その背後には皇国のシンボルが画かれた旗を高々と掲げた軽装備の兵士が40人ほどズラリと縦に並んでいた。
その光景をみてロジャスと村人は身じろぎひとつできぬ様子で硬直してしまった。
「 やぁトルン君お久しゅう。二ヶ月と十日ぶりだね。」
ニコニコとマギが会って当然といった風に手を振る。
「 ぐぬぬぅ~!マギさま!スケールでか過ぎですよぅ!最初は城下町だけだと思って探してたんですからっ」
トルンが恨めしそうな目でマギを睨みつける。薄く涙を浮かべながら・・・
「 ははは、最初は皆そうだったよ。トルン君は気付くのが早かったんだね。
ハナマルといいたいとこだけどコレはかくれんぼじゃないよ。
鬼ごっこだからトルン君が鬼そしてボクは逃げる・・・見つけたからといっても捕まえたことにはならないね。」
「 ぬぅ!ならば捕まえるまでっ!多少の怪我は覚悟してもらいます!」
負けぬとトルンが声を張り上げる。
マギが小躍りをして見せた。
「 ホラホラ、捕まえてごらん」
・・・そしてこれが開戦の合図となった。
「 全軍、くさび陣形の後、攻陣隊は魔法で牽制しながら攻撃隊の補助を!
攻撃隊はマギさまの捕獲・拘束を!では開始します!」
「 はっ!」
兵士達が声を揃えて応答するとキビキビと陣形を整え始めその半分ほどの兵士がコチラに走ってくる。残りの半分の兵士が空中に陣を描き始める。
と、そこで我に返ったロジャスが手下どもに向かって命令する。
「 なっ何かしらんが俺のお嬢ちゃんは渡すわけにはいかねぇ!
野郎ドモっ!行け!」
「 うわぁあぁ!」
手下は盗賊団の意地だか何だかで半ばヤケクソ気味それでいて泣きっ面で兵士達に攻撃を加えようと走り出した。
それに兵士は戸惑い指揮官に指示を求める。
「 トッ、トルン様!」
「 仕方ありませんね・・・邪魔になるようなら眠ってもらいます。」
やれやれといった様子でトルンが指示を出す
兵士は剣の腹で殴りつけたり、微弱・・・といっても普通の人間なら気絶してしまうほどの電撃で次々と盗賊団のメンバーをバタバタと昏倒させている。
独裁・・・圧倒的な力による独裁・・・
それを弱冠12歳の時期王位継承者が指揮している・・・。
この国の未来は大丈夫なのか・・・果たしてこの国を任せていいものか・・・
ああ、この世の理とは何と儚くも無常なのでしょう。とかいってみる。
それに弱気になった残りの団員が思わず悲鳴をあげる。
「 うわぁぁ!」
「 大丈夫!ボクが魔法で何とかするから!」
とマギが一体なにから村を守るんだっけと頭を抱えてしまいそうな台詞を吐く。
ヒョイヒョイと巧みに兵士の攻撃を避けながら完成させた魔法陣を発動する。
「 流れろ!」
同時に空間から大質量の水が作り出され攻撃隊の兵士の3分の2とその後ろにいた攻陣隊数名を一瞬のうちに水圧で押し流してしまった。とロジャス盗賊団2分の1ほど。
激しい激しい攻防の中で村人はボーゼンと見つめるもの、その場で寝だすもの、まったりと雲の流れを眺めているもの・・・様々だった。
「あはは、蝶々が飛んでる~」とトンボを追いかけ始めるものまで出だした頃ジーナはキッと立ちあがる
「 これで終わりだ!」
マギが第二派の魔方陣を発動させると激しく地面が隆起し、それに足元を巣食われ転倒したり高々とそびえる針状の柱に動きをとらわれる兵士達。
立っているものは残りわずかとなったところでトルンに近い兵士が声をあげる。
「 トルン様っ!今のであと残り10人もいませんっ!」
トルンが歯をギリギリと鳴らしながら呻くようにいう。
「 うぅ~・・・・・・さすがはマギさま・・・一騎当千とは名ばかりでは無いようですね。
しかしココで逃がしたら次は何ヶ月先になるかは分かりません。一気に片付けますっ!」
「 はいっ!」
同時に兵士たちが魔方陣を描きマギを囲むように・・・逃げ場の無いようにして発動した。
「 ちょっとは頭を使ったみたいだけど駄目だよ。」
軽やかにマギが後ろに飛びのいて魔法を避けようとしたその時・・・
「 もぎゃっ!?」
真後ろから魔法の直撃を喰らいマギの身体がビカビカと何度も瞬いたかと思うとその場にパタリと倒れてしまった。
「 うぅ・・・ジーナさん・・・何するの・・・身体が痺れて動かないよう・・・」
「 もぉ~・・・いい加減なさいっ!ロジャス達はとっくに動けなくなってるわよ!」
まわりには既に戦闘不能となったロジャスとその仲間たちが死屍累々と横たわっていた。
「 あふ・・・さらばボクの有志達・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・間
「 やったっ?やった!?捕まえたーーーっ!」
と喜び狂いながらトルンはマギを何重にも何重にも縄でグルグル巻きにしていく。
「 よかったですねっ!皇子!コレで私達も2ヶ月ぶりに家族に会えますっ!」
「 ええ、これも皆あなた達のお陰です。」
「 いえいえ、トルン様の実力でしょうっ!」
お互いの勝利を喜びあうトルンと兵士達・・・。
「 あ、皇子さま。この辺で転がってるのは悪い盗賊団なので一緒に連れてってくださいな?」
ジーナは大根でも買うかのような口調で頼むとトルンは顔面蒼白といった感じでショックをうけて
「 そ、そんな・・・まさか・・・っ!
善良な市民をそそのかし盗賊団の親分になるなんてっ!マギさま、なんて悪・・・」
「 いや、違うんだけど・・・駄目かしら?」
「 いえっ!マギさまの罪は僕の罪!
この方達には責任をもって社会復帰への面倒をさせていただきます。」
とフルフル手を振りながらそれに答えるとさっさと伸びている兵士とロジャス達を回収して早々に立ち去ってしまった。
もう空が赤く染まり爽やかな心地よい風が吹く季節の嵐のようなひと時だった。
緊迫の最中、一人の少年が現れた
- 2007/11/09 (金) 00:13
- 働くお母さん