デジャヴ
ざわざわと賑わいを見せる中央公園。
そこにマギとそれを取り囲むおっさん共の姿があった。
「 トルン君は真面目だから面白いんだよね。
んー、今はちょっと捻くれて寂しいときもあるかな。
小さい時は全部やることに受け答えてくれたんだけどー。
あぁ、小さいトルン君に会いたいなー」
ひときわ身体の大きい男が声を大きく笑いだした。
「 はっはっはっ!あんたもトルンってやつも大変だよな。トルンって皇子の名前と一緒だろ。いつか良いことあるさ。しかしあんた本当にキャサリンに似てるよな。」
「 キャサリンはボクの従兄弟なんですよ。年も離れてますしね。
キャサリン兄さんは元気していますかね。」
ペラペラとありもしない舞台設定を組んでいく。
「 ああ、超元気だぜー。この前も俺んちのヤギの世話をしてやるって言うから頼んだら全頭いっぺんに逃がしてくれたしな。あのヤロウ今度あったら小屋掃除をさせてやる・・・。」
「 ウチはハトを全部焼き鳥にされた・・・」
「 オレんとこは店番を頼んでたら全部「半額セール」とかいってスッカラカンになった・・・」
台詞の後半にかけておっさんの顔が険しさを増していく。
「 あはは。キャサリン兄さんもあいかわらずだなぁ。
でもボクはフランソワーズですからね。」
んなことない。キャサリンもフランソワーズもマギである。
そんなこんなで思い出となったキャサリンの話に華を咲かせていた。
そろそろ日も傾いたとき思い出したようにマギは言った。
「 あっと、そろそろあの子のところに行って来よっと。」
「 んぁ?何か約束あったのか。じゃぁな引き止めて悪かったな」
そう、男たちは血眼になりながら、もういないキャサリンを探していたのであった。
----------------間------------------------
少し薄暗い路地を通って年の割には大きめの少年が怪しげな煙を出している家のドアをあける
「 ちわ~。頼まれたもん届けに来たんだけど・・・」
いつもと同じく雑にそこかしらにネジやらコードやらが床にちらばり鈍器の山が危なく積み上げられている。そこに普段と違う空気を感じ、銀髪に赤い瞳といった珍しい毛色をした見知らぬ客人に少年の目が止まる。
怪しげな人形を動かしながら何やら相談している。
「 作ったのは良いけど配線が入りきらないな~。」
「 うーん。ココの配線を寄せれば上手く入るんじゃないかな。」
「 あっ!そっか。やったコレで・・・」
ほっといたら長く続きそうな会話に少年が声を挟む。
「 なぁ、ノエル。届け物・・・よく解からんが・・・」
「 あぁ、ケーツ。いらっしゃい。」
それにノエルが手を止め漂々と返す。
それにつられて客人の目がピタリとケーツに留る。
ケーツ少年の胸がドキリと脈打つ。だか、それは苦しくはなくむしろ心地の良い衝撃で・・・
客人はにこっりとケーツに笑いかける。脳内に衝撃が走る。心臓を射止められた。
「 お客さん来たみたいだしそろそろ帰るね。」
客人はノエルに声を掛けると、そのまま「ごゆっくり~」と言って扉を静かに閉めて出て行った。
ぼーっとしばらく余韻を残ししばらくドアを見つめていたが、ハッとしケーツは目を輝かせながら言った。
「 なぁ今の子、誰?」
「 ああ、ミシャルさん?変ってるけどいい人だよ?」
ミシャル・・・ここでもマギは名前を持っているらしい。
「 なんか良いなー・・・線が細くて。ジルとは大違いだ・・・。」
「 ああ見えてミシャルさんはオ・・・」
ノエルは「男」と言いかけて止めた。
ほっといたほうが面白そうに思えたからだ。
「 お?」
「 お、お、お手玉が得意なんだ。」
「 ・・・なんだそりゃ。うーん、また会えるかなー」
「 たまにしか来ないからね。どうだろ。
それよりもケーツ、この人形なんだけど人形はおしゃべりするんだ。
テストもかねて何か話してあげてよ」
「 おー、また凄いものが出来たな~。」
「 コンニチハ。けーつサン。ボクたろうクン。」
途切れ途切れに高音の音声でお喋り人形が喋った。
「 おうっ!よろしくな!ところでお前は話す以外に何が出来るんだ?」
「 ・・・・タダイマ検索中・・・・・・」
ガタガタぶるぶるとお喋り人形が震えだす
「 ・・・・ピー・・・パー・・・検索中・・・」
今度は煙が立ち昇り始める。
ケーツはソレを興味津々といった感じでお喋り人形の未知の機能に期待に胸を膨らましていた。
「 ・・・・・・・・・検索終了・・・自爆すいっち作動確認・・・10・7・5・・・」
正常とは思われないカウントをお喋り人形がとりだす。
「 ・・・え?」
ケーツが間抜けな声をだすとお喋り人形の動きが止まった。
「 ・・・あっ!」
ノエルが思い出したように声を上げる。
だがもう遅い・・・。人形はガタガタと上下左右に大きく揺れ始めた。
と、次の瞬間 明るい閃光があたりを真っ白に変える。
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所変わって狭い裏路地。
マギは今度はどこに行こうかとブラブラと歩いていた。
どぉぉぉん・・・
大きな爆音とともに地面がかすかに揺れた。
さっき出てきた家から巨大な噴煙が立ち昇っていた。
「 うぁっちゃー。やっぱりあんなところに配線ねじ込んだのがいけなかったのかな?」
マギはまたやってしまったとばかりに舌をベッとだした。
「 おねぇちゃん何してるの・・・」
マギの斜め下から声が掛けられる
そこには見覚えのある子供が立っていた。
市民もそれなりにやるようです。
- 2007/11/09 (金) 00:25
- 市井におでかけ