後悔
「 くそっ!来るんじゃなかったっ!」
勢いよくドアが開かれ中に篭った煙が外に噴出す。
霧が晴れるように煙が薄らいだ中、ご立腹のケーツが顔を出す
「 うぇ~。ぺっぺっ、ノエルのやつ自分だけ魔法でガードしてるし・・・」
口から煙を出しながらブツブツ・・・といっても周りに人が居れば丸聞こえな声量で文句を言いノシノシと帰路を辿っていた。
「 もう決めたっ!もう絶対にアイツのところには行かねぇっ!関わらなねぇっ!」
決意を決めて叫んだ。
とはいえど昨日の晩飯が何だったか覚えてないぐらい馬鹿なので明日になったらすっかり忘れているから心配はいらないのだが。
怒りにまかせ道端の石をけると、思いのほかよく飛び、思いのほか的外れな場所に飛んでいった。
そのまま通行人に・・・・。「いっ!」一直線を描き蹴り飛ばした石は前を通りがかった男の腹にキレイにヒットした。腹を抱えその場にうずくまってしまった。
「 すすす・・・すいません。だ、・・・大丈夫ですか?」
あわててケーツが近くに駆け寄る
「 ぅぅ・・・今日は厄日か・・・あ、ねぇ、君。ちょっといいかな」
腹をさすりながらも、スクリと男が立ち上がる・・・。
ぬっと立ち上がった男はケーツが見上げるほど背がたかく、
うららかな陽気には場違いなローブを身に纏い、さらにフードを目深にかぶっている。顔も薄暗い路地のなかでは確認することはできない
「 な、なんでしょうか・・・」
異様な怪しさに少し驚きながら気丈にケーツは答える。
「 この人を探しているんだけど・・・見なかったかい」
ヒラリと一枚の写真を見せる。ケーツは覗き込んでハッとした。
「 あっ、ミシャルさんだっ」
( ミシャル・・・名前また違うのじゃないか)
いきなり男はガクリと手と膝をついて倒れこむ。
話がみえないケーツは内心この場を離れたくてしょうがなかったが声を掛ける。
「 あのっ・・・良ければ一緒に探しましょうか?家にお金いれてからじゃないとダメだけど」
男があまりにも落ち込んで心配だったのと
ミシャルにもう一度会えると思っての提案だった。
「 あぁ、君は優しいんだね。じゃぁ頼めるかな。この辺よく解からないんだ。」
男は目を潤ませながらケーツを見上げた。同時にはらりとフードが肌蹴た。ふと違和感を覚え、差し伸べていた手がピクリと動く。
( あれ、この人どこかで見たような・・・)
ケーツは淡い疑問を浮かばせながらフードの男に手を貸してやった。
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場所はところ変わって数百メートル先ではマギが子供に飛び掛かっていた。
「 小さいトルン君みーつけたっ!!」
勢いよく抱きつくと衝撃で頭がグワングワンと回っていた。
「 おねぇちゃん。誰?あたしトルンって人じゃないよ。」
突然のことにも身じろぎせず少女は答える。
「 あらら、お嬢ちゃんだったか。ボクは”おねぇちゃん”でもないよ。」
マギは少女の頭をコレでもかというぐらい撫で回しながら答えた。
「 あたしはハナっていうの。おねぇちゃんはなんて名前?」
「 ボクはミシャル。ねぇねぇ君は本当に小さいトルン君にそっくりだね。」
ここではミシャルで通すつもりらしい。
かまわずハナは質問を続ける。
「 ・・・??ここで何してるの?」
「 んー、散歩♪」
「 変ってるのね。ここより表通りを歩いたほうが気持ちいのに」
「 うん、よく言われるよ。ハナちゃんは何をしてるのかな。」
「 あたしはお父さんのお手伝いをしてるの。
おにぃちゃんはノエル兄ちゃんに頼まれたものを届けに行ったの」
「 そっか、あの子の妹か・・・」(・・・そういえばさっきの子大丈夫かなぁー)
マギは遠い目をしてふとケーツ少年を思い出だす。
「 ハナちゃん、もしお兄ちゃんが帰ってこなくても僕を恨まないでね」
ハナの肩にポンと手をのせた。
「 何いってるの。あたしは誰も恨んだりしないよ~。」
「 うんうん、ハナちゃんはいい子だねー」
とマギはハナの頭をグリグリと撫で回していると、話し声が近づいてくる「あ、おにぃちゃん、帰ってきた。」ぱっとハナが話し声がする方へ視線を移す
「 ・・・だと思うんです・・・あ、ここです!待っててください。すぐ戻ります!」
ケーツ少年が男に声を掛け、小走りに駆け寄ってくる。
男はそれに潤んだ瞳で返答する「ごめんね、急がなくていいから・・・ん?」「あっ・・・」ケーツと男がソレに同時に気が付く
「あーーーーーっ!!」
大きな声が2つ重なって聞こえた
もう一人の声はマギにはよく聞き覚えのある声だった。
「 みつけましたよ!マギさまっ」
トルンが今にも飛び掛ってきそうな勢いで叫ぶ
「 ミシャルさんが何故ここにっ!?」
ケーツが再開の嬉しさのあまり上ずった声をあげる。
マギは心底残念そうな顔をしながら
「 うぁ、トルン君見つけるの早かったね。」
「 親切な方の家に寄らせてもらったら偶然マギさまがいたんです。」
「 それよりも大声で名前言ったら偽名使ってる意味ないでしょ。」
ぶぅっと頬を膨らませるマギ。
「 あれ、何か見たことあると思ってたら、トルンさん、うちの妹に似てるっ」
「 ねぇねぇ、お兄ちゃんとおねぇちゃんとこの人知り合いなの?」
「 んー、どうだろねー」
「 とぼけないでくださいっ!マギさまっ!!」
「 違っ!ミシャルさんとは今からお知り合いになる予定・・・って何いってんだ俺っ!?」
ぎゃーぎゃーと会話が混ざって何が何だかである。
すったもんだの4人に大きな影が重なる。
反射的に4人がほぼ同時に振り返るとそこには大きな熊がたっている。
「 ぎゃーーー、こんな市中に猛獣がっ!」
「 トルン君、落ち着きなさい。よく見たら人間だよ。」
クマと呼ばれた男が少しムッとした様子で話した。
「 ・・・うちの息子と娘に何か用でしょうか?」
「 ・・・お父様で?」
腰を抜かしたトルンが間抜けに答える。
君に出会えた軌跡を
- 2007/11/09 (金) 00:26
- 市井におでかけ